七福蕎麦で会おう

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【今日の1枚】ジョン・マッキー:ワイン・ダーク・シー他

 

Various: Wine Dark Sea

Wine Dark Sea

・ダン・ウェルチャー:スプマンテ

・ドナルド・グランザム:ジェ・エテ・オ・バル

・フランク・ティケリ:クラリネット協奏曲(Solo:ネイサン・ウィリアムズ)

・ジョン・マッキー:吹奏楽のための交響曲「ワイン・ダーク・シー」(世界初録音)

 

ジェリー・ジャンキン指揮/テキサス大学ウィンド・アンサンブル

 

 

 Reference Recordingsから出ている吹奏楽作品集。このレーベルは高音質録音で有名で好きなレーベルの一つです。マスランカの交響曲なども出していますが、吹奏楽CDを出すことは稀、しかしいずれもハイクオリティな盤となっています。

 

一曲目の『スプマンテ』は1998年にボストン・ポップス・オーケストラ50周年記念の委嘱作として登場し、後にウェルチャーの弟子であり友人のポール・ビッセルによって吹奏楽編成に編曲されました。

スプマンテスパークリング・ワインの一種で、題の通り溌溂とした小品となっています。

 

2曲目『J'ai ete au Bal(ジェ・エテ・オ・バル)』はフランス語で「踊りに行こう」という意味で、ケイジャン(アメリカに入植したフランス系)舞曲やニューオリンズのビックバンド風のジャズをベースにした楽しい一曲。

グランザムは「スターリー・クラウン」や「バムズ・ラッシュ」然り、魅力的なジャズ風作品が多いですね。

 

ティケリの『クラリネット協奏曲』は各楽章にアメリカを代表する作曲家の名を冠しておりそれぞれのオマージュとなる作品になっています。

第1楽章は「ジョージのためのラプソディー」はジョージ・ガーシュウィン。冒頭のクラリネット・ソロは聴いての通り『ラプソディー・イン・ブルー』のトリルとグリュッサンド。

第2楽章はアーロン・コープランドをオマージュした「アーロンのための歌」。この曲白眉の楽章で最も作曲家の様式を踏襲しており、コープランド得意の夜明けの遠鳴りのようなアダージョを見事に再現しています。コープランドの『クラリネット協奏曲』第1楽章も思い返されます。

そして第3楽章「レニーのリフ」。レニーの愛称でお馴染み、アメリカ史上最大の指揮者で作曲家のレナード・バーンスタインをオマージュ。バーンスタインクラリネット・ソロと言えば『プレリュード、フーガ&リフ』が思い起こされますが正にそこからの踏襲でジャズ色の強い楽章。

 

この盤のメイン、ジョン・マッキーの『吹奏楽のための交響曲「ワイン・ダーク・シー」』は3楽章形式の30分ほどの(吹奏楽作品としては)大規模な作品。

アメリカの若手吹奏楽作曲界で一番の注目株であり私も大好きな作曲家。古典様式や吹奏楽らしさを維持しつつも革新的かつオリジナリティの高い作品を多く残しており、これからもまだまだ沢山の傑作を残してくれることでしょう。

この作品の副題「ワイン・ダーク・シー」はホメロス叙事詩オデュッセイア」の中に形容辞「葡萄酒色の海」から取られています。しかしこの言葉の詳しい意味は不明だとか。(戦争によって血に染まった海、或いは古代ギリシャの葡萄酒は海の色だったとも、諸説あり。)

第1楽章「傲慢」は一応ソナタ形式。ファンファーレからのオデュッセウスの旅路の困難を描いた音楽になりマッキー得意の変拍子の応酬が白眉。そして第2楽章へつながる静寂のコーダ……。

第2楽章「儚い永遠の糸」はオデュッセウスを愛した海の女神、カリュプソ―の愛と悲しみの音楽。とても美しい、管楽アンサンブル屈指のアダージョではなかろうか。

第3楽章「魂の叫び」。導入は第2楽章からのエコー。そして再びオデュッセウスの苛烈な冒険の音楽。巨人と戦ったり、ゼウスの怒りにふれ船を沈められたり……最後に第1楽章の第1主題が再現される。

標題音楽であり各楽章にベースとなる物語はあるものの描写音楽ではなく、形式的な部分もある新古典的な音楽であります。神話題材の交響曲と言うとアッペルモントの「ギルガメッシュ」を思い出しますがこの曲は交響詩の延長といった方がしっくりきますね

近年では吹奏楽コンクールでもこの曲が演奏される機会が多いみたいですが時間の制約上カットは必然でなので、こういった各楽章に関連性のある曲はやはり全曲一気に聴きたいですね。